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ハイブリットな働き方1 「技術者×本屋」〈前編〉

AI(人工知能)に取って代わられる職業に関する記事が話題となったのも記憶に新しい今日この頃。仮にAI取って代わられなくとも、クリエイティブ系の仕事を老齢まで続けるのは、一部のスペシャルな人を除いて厳しいと思う。もちろん私も。そんな先行きの見えない中でも、面白そうな働き方を実践している人に話を聞きに行ってみたい。
今回は、クリエイティブスタジオ「ワン・トゥー・テン・デザイン」に在籍中の2012年に副業として「YUYBOOKS」をスタートさせ、今春からフリーランスとなったばかりの小野友資さんにお話を伺った。

小野さんのご自宅兼仕事場にて
小野さんのご自宅兼仕事場にて

小野さんが営む「YUYBOOKS」は京都と淡路島の2店舗を構える小さな書店。2店舗ともにショップ・イン・ショップの形態を取っていて、京都は「iroiro」というカフェ、淡路島は「NEHA」という洋服店の中にある。取り扱われる本はアートブックが中心、それぞれに個性があり、一般書店では見かけないものばかりだ。オープンしたのは2012年12月、会社員として働く傍ら副業としてスタートした。彼が所属していた「株式会社ワン・トゥー・テン・デザイン(以下、1→10)」はカンヌライオンズを始め国内外で多数の受賞歴を持つ、業界でも有名な会社である。Webサイトやスマートフォンアプリ、商業施設などで楽しめるインスタレーション作品の制作に携わり、非常に多忙な日々を送る中で、なぜ書店を始めようと考えたのだろう。

自宅にも多くの本を在庫している
自宅にも多くの本を在庫している

Flash栄枯盛衰

高校の時から大の映画好きの小野さん。当時、ヤン・シュヴァンクマイエルというチェコのクレイアニメーション作家に衝撃を受けたことが映像制作を始めるきっかけとなった。美大を目指して一浪した後、フリーターをしながらアートアニメーションを作り続け、その後、映画の専門学校在学中は映画館で映写技師のアルバイトをしながら年間365本の映画を劇場で観たという。フリーター時代を経て京都市内のWeb制作会社に初めての就職。26歳の時、2社目の就職先として1→10に入社した。当時はFlashアニメーションを使ったWebコンテンツの全盛期。モーション・デザイナーとしてFlashを駆使した広告制作にのめり込んでいった。

小野: 24歳くらいまで「なんとでもなる」っていう妙な自信を持って、フリーターしてました。そして、そろそろちゃんと就職しようという時に、Webというものを知って、3か月間の職業訓練でHTMLとかプログラミングを学んで就職したんです。1社目ではデザインとコーディングが中心でした。でも元々映像を作っていたから、Flashを使った仕事をしたいということもあって、約1年半後に転職したのが「1→10」です。Flashがとっても面白くて。当時はやればやるほど注目される時代やったんですよね、サイトにFlashを使って世に出したら「このサイト面白い」って反応がかえってくる。キャンペーンサイトを作ればほんとに注目されるから、賞レースにも乗るんですよね。僕もたくさんの広告賞をいただきました。Flashで賞レースとか今はもうあまり考えられないですけど、Webが面白かった時代なんですよね、ほんとに。

そのFlash全盛期が終焉を迎えるきっかけとなったのがiPhoneの登場である。日本でiPhone3Gが発売されたのが2008年。2011年まで1割以下だった国内のスマートフォン普及率は、2013年には2人に1人が所有するまで上昇した。iPhoneで再生できないFlashアニメーションは、人々から見られないものとして次第に姿を消していく。スマートフォンの普及と同時にTwitter、FacebookなどのSNSが台頭し、情報の発信もWebサイト中心からSNS中心へと移行。賞レースに乗る広告もFlashではなく「インターネットをうまく使った」ものに変わるなどWebの状況は一変した。

小野: iPhoneが普及し始めて2年くらいでFlashの仕事はピタっ、となくなりましたね。同時にSNSによってみんなが本質を分かるようになったというか、嘘つけへんような世の中になって、単純に「これどうですか、面白いよ」って言うのが難しくなってきたんだと思います。
それでWebサイト制作から、スマートフォンアプリとインスタレーション制作に移行する動きを会社全体でしてて、僕も多様な技術を求められるようになりました。コーディングもするし違うプログラミング言語も触るしと、大変でしたね。最後の3、4年は「アプリ作るならこれが必要」、「インスタレーション作るならこれが必要」と、次々に飛んで来る球を必死に打ち返すような感覚で、その都度技術を学びながら対応していきました。

そんな多忙な日々を送る中で次第に「団体や企業で活躍する人間を目指すより、個人として仕事を依頼されるポジションを築きたい」という考え方に変化したという小野さん。2011年に起こった東日本大震災を機にキャンペーンの仕事が激減、大企業の倒産を身近に感じるなど、それまでの価値観を大きく揺るがされた。

小野:それまでの僕は仕事も含め、時代の変化に合わせていってたんですよね。でも時代の変化に合わせてるとしんどいし、ずっと合わせられへんぞと思ったんかもしれないですね。じゃあもう、自分の名前を独自のスタンスで売った方が、楽しいし健全やなと思ったんです。

小野友資 Yusuke Ono
デザイナー / 京都精華大学非常勤講師 / YUYBOOKS代表 1980年、神戸生まれ。2007年より1-10designに参加、モーションデザイナーとしてウェブサイトからデジタルサイネージまで様々なフィールドに渡る制作に関わる。在籍中の2013年個人活動としてYUYBOOKSオープン。本をコミュニケーションツールとし、企画やデジタル作品を展開。2016年よりデジタルの活動をフリーランスへ。デジタルばりばりつかってアナログなもの集めています。
YUYBOOKS http://yuy.jp/

■ YUYBOOKS KYOTO
〒 600-8459 京都市下京区松原通油小路東入ル天神前町327-2(いろいろデザイン内)
OPEN / CLOSE 15:00-23:30  HOLIDAY : 火・水

■ YUYBOOKS AWAJISHIMA
〒656-2334 兵庫県淡路市釜口4652(NEHA内)
OPEN / CLOSE 11:00-19:00 HOLIDAY : IRREGULAR


Text&Photo:Masae YAMADA
Cooperation:Haruka MUTA

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