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Things / researchlight

researchlight『河童と、ふたたび』

この秋に開催されるKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMNにおいて、前回(2016年春)に引き続き、デザイン・建築文脈からのプログラム(researchlight『河童と、ふたたび』)を発表するUMA / design farmの原田祐馬さんと、dot architectsの家成俊勝さんのお二人にデザイナーとしての作品づくり、舞台芸術祭への関わり方についてお話をうかがった。

写真左:原田祐馬さん、右:家成俊勝さん
写真左:原田祐馬さん、右:家成俊勝さん

— 原田さんはこの国際舞台芸術祭がスタートした2010年から、全体のアートディレクションを担当されています。前回からプログラムを作る側にもなったのはどのような経緯だったのですか。

原田:僕たちが年に一度開催しているDESIGNEASTというプロジェクトをKYOTO EXPERIMENTのプログラムディレクターである橋本さんに知っていただいていたということもあって、舞台芸術に関心の高い人に限らず、多様な人々が交わる文化の坩堝のような賑わいを作れないかというお話をいただき、そこで僕から家成さんに声をかけて一緒にプロジェクト化していきました。
今年からロームシアター京都という新しい劇場がメイン会場になるということで、リサーチを通して同劇場が立地する京都・岡崎エリアの歴史や土地を見えるようなプログラムをつくるというのが僕たちからの提案でした。
アートディレクションをするのとプログラムを作るのでは、それぞれアイデアの質が全く異なっていて、その両方に関われるというのは僕たちにとっても面白いことで、いま同時に関わっていることで両方がさらに面白くなる気がしています。

— 家成さんは先鋭的な作品を扱う舞台芸術祭に、デザインや建築の分野からどのように関わっていこうと考えましたか。

家成:僕自身はKYOTO EXPERIMENTでは面白い作品が上演されるので以前からよく観に行っていました。今回はデザインの文脈を入れるということを聞いて、舞台芸術祭だからと難しく考えることもなく、外のフィールドを使ってデザインの視点から考えられるコンセプトと体感型の空間を作ることができればいいかなと思いました。

原田:最初はまず舞台芸術祭の中の機能性を考え、ミーティングポイントみたいなものを作ろうとしていたんです。でも、よく考えると7年間京都で続いているKYOTO EXPERIMRNTに対し、わざわざ作るまでもなく既に色々なものやことが出会っているなあと。それであれば、リサーチとデザインとインスタレーションの間みたいなことにチャレンジできたらと思うようになり取り組むようになりました。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING researchlight『河童よ、ふたたび』 ロームシアター京都 ローム・スクエア 撮影:衣笠名津美
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
researchlight『河童よ、ふたたび』 ロームシアター京都 ローム・スクエア
撮影:衣笠名津美

— 今年の春に開催されたKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRINGではロームシアター京都の中庭、ローム・スクエアに、街のインフラを模した原寸大の木製構造物が配置され、子どもたちの遊び場として大変な賑わいを見せていました。ここは普段、どちらかというと大人向けの施設だと思うので、小さな子どもたちが駆け回る姿は新鮮でとても良い雰囲気でした。
ただ離れた場所にある京都芸術センターの展示との繋がりが見えづらかったという印象もあります。

原田:前回は京都芸術センターとロームシアター京都の二つの会場を繋げて使うという試みでしたが、ロームシアター京都の会場に子どもがたくさん集まってきて、自分たちが考えていた以上の盛り上がりになり、おそらくそれも原因して京都芸術センターの展示との温度差が生まれたような気がしています。しかし、芸術センターでの展示は、町に暮らすみなさんの視点で岡崎が浮かび上がっていたので、アーカイブスとしてとても重要だったと感じています。また、同時に岡崎エリアに詳しい人と一緒に町のインフラや遺構を辿って街を捉え直すというまちあるきのイベントもしました。
まちあるきと京都芸術センターの展示とローム・スクエアの構造物が三つ巴になって、それらが合わさると理解が深まるものを目指していました。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING researchlight『河童よ、ふたたび』 京都芸術センター 撮影:守屋友樹
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
researchlight『河童よ、ふたたび』 京都芸術センター
撮影:守屋友樹
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING researchlight『河童よ、ふたたび』 京都芸術センター 撮影:守屋友樹
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
researchlight『河童よ、ふたたび』 京都芸術センター
撮影:守屋友樹
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING researchlight『河童よ、ふたたび』 京都芸術センター 撮影:守屋友樹
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
researchlight『河童よ、ふたたび』 京都芸術センター
撮影:守屋友樹

— 今回は前回と全く違う形になりつつも、子どもに楽しんでもらえるものにしたいとか。

原田:そうですね。前回は例えば橋のところで立ってお酒飲んでいるというようなことを想像していたんですが、実際は子どもたちの方が強かった。やってみて(木製構造物に)登るとか、跳んで降りるとか、子どもたちがチャレンジして遊べる場所になっていると感じました。おそらく周辺で自由に遊ぶ場所がたくさんあればそうならなかったと思うのですが、想像以上に遊び場がないということがわかってきました。そうした場づくりも同時にできると空間としても新しいチャレンジに繋がるんじゃないでしょうか。仮に毎年このような場が立ち上がって、場を経験した子どもたちの姿勢が変わっていくようなことがすごく大事なんだろうと思います。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING researchlight『河童よ、ふたたび』 ロームシアター京都 ローム・スクエア 撮影:衣笠名津美
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
researchlight『河童よ、ふたたび』 ロームシアター京都 ローム・スクエア
撮影:衣笠名津美

— そういえばCLASSROOM Magの取材で山口情報芸術センター[YCAM]を訪れた時、「コロガルガーデン」も見学したのですが、そのときに『河童よ、ふたたび』で見た光景を思い出しました。

原田: YCAMは公共の場をどうやって市民に開いていくかということを、すごく上手にやっている事例だと思っています。僕たちもYCAMと一緒に仕事もしていますし「コロガルガーデン」の前の「コロガルパビリオン」にも見学に行っていて、子どもが積極的に関わる状況を生むYCAMのプロジェクトは、親も巻き込まれてしまう力があるのだと感心していました。ですので、気にしてないと言っても影響を受けている部分はあると思いますが、彼らとは色んなことを一緒にやっていて完全にファミリー化しています(笑)。
また、『河童よ、ふたたび』の構造物は子どもが登らないような高さを意識して作っていたんですが、蓋を開ければ子どもたちは平気で登って行くし、僕らが全く想像もしてなかった登り方する子もいて、自分たちが忘れていた身体感覚を見てるだけで思い出すような感じがありました。
会期中に何度か通う中で、親が子どもに「これくらい跳べるようになりなさい」って言いながらジャンプさせているシーンを結構見かけていて、その後にYCAMに行った時にもそれと全く同じようなシーンを見かけて、目指すべき風景が近いのだろうなぁと。

— ところでタイトルの「河童」にはどんな意味があるのですか。

家成:人が環境を自分たちでコントロールするというのが近代化の意味するところだと思うのですが、我々は近代化と同時に自然との繋がりの中で育んできた河童とか付喪神(つくもがみ)とか縁起絵巻に描かれているような風景、ああいう想像力がどんどん失われてきたと考えていて、このタイトルには、現代の都市の中においても河童や付喪神ともう一回出会えるような想像力を復活させていこうという思いがここに込められています。

原田:前回の『河童よ、ふたたび』で少し河童と触れ合ったということで、今回は『河童と、ふたたび』となっています。

— 参加者にこの場所(京都・岡崎)に関わってほしいという思いは最初からあったんですか。

原田:そうですね。自分が今いる場所に何が寝そべっているのかを想像することも大切だと考えています。きっと子どもでも自分がいる場所の歴史を知った瞬間に人に言いたくなったりすると思います。前回は(木製構造物の)一つ一つにタグが付いていて、そのタグを読むとこれが何か説明できるようしていましたが、今回もそういうことを誘発させられたら良いなと思っています。

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING researchlight『河童よ、ふたたび』 ロームシアター京都 ローム・スクエア 撮影:衣笠名津美
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
researchlight『河童よ、ふたたび』 ロームシアター京都 ローム・スクエア
撮影:衣笠名津美

— 今回はどのようなプログラムになりそうでしょう。

家成:今回の問題意識としては二つあります。
最近は色々なところでコミュニケーション能力を上げなさいというようなことをすごく言われます。その背景には、高齢化社会にともなう介護を代表とする対人サービス業の仕事がどんどん増え、竹を編むというような工芸的な仕事が激減していているということがあると思うんですが、ここでいわれるコミュニケーション能力は人対人のことだけです。一方で自然、それは空でも風でも星でも岩でも或いは精霊など実際には言葉を発しないけどそこに存在している僕たちの土台みたいなものと会話する機会、それを感じる機会というのはどんどん奪われていっているので、人以外とコミュニケーションを持てるきっかけを作りたいということ。
もう一つは、僕たちはデザインを生業としていますが、デザインの根本的な考え方というのがいつも都市側から見た考え方になっています。しかし都市から自然を見るのではなく、もう少し別の大地とか海とかそういう自然の方から都市を見直していくように視点を持てないかということが背景にあって、それでこう風になびくような、ライ麦畑でつかまえてのような状況があって、その中をくぐり抜けていくと、目地に沿ってあるブロックの一つ一つで自然にまつわるモチーフに出会って、そこでそのものと面と向かったり、或いは音が聞こえてきたりするようなものができたらと考えています。

原田: 今回は登るではないけど、草原を歩くみたいなそういう体験ができると。
普段ここ(ローム・スクエア)は、犬の散歩道とか自転車の通り道とか、色んな道になっているので、普通に散歩できるような場所のまま有りえたら良いなという話もしています。
人と人との対話だけじゃなくて、空間と人との対話とか、歴史との対話とか、動物との対話とか、だから周辺にいる鳥が集まってくるような装置を作ってみたりとかして、対話の草原みたいなものができないかなと思っています。
イベントも更に充実させる予定で、宗教人類学者の植島啓司さんにトークをしてもらったり、山伏の坂本大三郎さんに来てもらったりとか、この場をうまく活用できれば良いなと思っています。

インタビューの時に見せていただいた模型
インタビューの時に見せていただいた模型

— 今回もどこかでアウトプットに至る経緯みたいなものを展示されるんですか。

原田:展示をするかどうかはまだ検討中ですが、今回は本を作ろうとしています。
対話というのがテーマになっているので、それをキーワードに色んな人達から寄稿してもらって一冊の小さい本を作り、テキスト代わりにできたらと思っています。記録集になるかもしれませんが、会場に隣接する蔦屋書店で販売もする予定です。
ローム・スクエアでのリアルな体験と本を読むことによる疑似体験を持ち帰った時、この場所での記憶と本を読むことで蘇ってくる他の人の個人的な記憶が繋がって、展示が終わっても楽しめるものになるといいなと思っています。前回よりも難解な方法を選んでいます(笑)。

家成:岡崎エリアのお話を色々と聞いていると、歴史上京都のエッジに位置していて、かつては都市として栄えていたものの、応仁の乱でお寺が全部焼き払われ荒地に戻り、幕末には各藩の藩邸が立ち並ぶ街になり、その後の動乱でまた荒れ果てた土地になってと、都市と荒地を交互に体験している場所なので、前回が都市の体験だとしたら今回は荒地の体験ということなのかもしれないですね。ややこしいですか?

— ややこしいながらも、実際には子どもでも楽しめるというものになるということでしょうか。

家成:そうですそうです。体感として面白がってもらえるものを作ろうと思います。
前回も手前では色々ややこしいことを考えているんですけれど、作ったものは経験として楽しいものという感じだったんで。

原田:手前ではややこしく、アウトプットは気持ち良くということでやっています。

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KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 AUTUMN
10月22日(土)〜11月13日(日)開催
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関連トーク

展示に協力いただいたお二人をゲストに招き、山や宇宙といった、人智を超えた存在に魅了され、それらと「対話」を続けるお二人の「接触の作法」についてお話をうかがいます。

日時:10月22日(土)14:00–16:00
会場:ロームシアター京都 パークプラザ3階 共通ロビー
ゲスト:磯部洋明(宇宙物理学者)、坂本大三郎(山伏)
モデレーター:家成俊勝(dot architects)、原田祐馬(UMA / design farm)
料金:無料(事前申込不要)
主催:KYOTO EXPERIMENT、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)
協力:京都岡崎 蔦屋書店

ゲストプロフィール:
磯部洋明(いそべひろあき)/宇宙物理学者
1977年生まれ。京都大学大学院総合生存学館准教授。専門は宇宙物理学で、特に太陽の爆発現象の研究を行っている。様々な分野の研究者と共同で宇宙に関する学際的な研究も手がけており、宇宙倫理学や宇宙人類学などの新しい学問分野を立ち上げた他、最近は歴史研究者と一緒に古文書の記録から過去の太陽活動やオーロラの変動を調べる研究を進めている。お寺で科学と宗教について対話する会の開催や、落語、お茶、お香、書道などとのコラボ企画も手がけている。

坂本大三郎(さかもとだいざぶろう)/山伏
1975年千葉県生まれ。芸術や芸能の発生や民間信仰、生活技術に関心を持ち東北を拠点に山伏として活動している。春には山菜を採り、夏には山に籠り、秋には各地の祭りをたずね歩き、冬は雪に埋もれて暮らす。著書に『山伏と僕』(リトルモア、2012)、『山伏ノート』(技術評論社、2013)がある。

関連レクチャー

日時:11月予定
会場:ロームシアター京都
講師:植島啓司(宗教人類学者)
詳細は決定次第、フェスティバル公式サイトでお知らせします。
http://kyoto-ex.jp/

原田祐馬 UMA / design farm , 家成俊勝 dot architects
■ UMA / design farm
2007年、原田祐馬により設立。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験を作りだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。香川県・小豆島町のアートプロジェクト「醤の郷+坂手港プロジェクトー観光から関係へ」、奈良のタンポポの家の障害のある方の仕事づくり「Good Job! project」などがある。現在のメンバーは、原田祐馬、山副佳祐、西野亮介、津田祐果、平川かな江の5人。
http://umamu.jp

■ dot architects
家成俊勝、赤代武志により2004年共同設立。大阪・北加賀屋にあるコーポ北加賀屋を拠点に、建築以外の色々なフィールドの人たちと活動中。建築における設計、施工のプロセスにおいて専門家、非専門家に関わらず、様々な人々を巻き込む、超並列設計プロセスを実践。障害者と共に立てる「Inclusive Architecture」や小豆島において地域の方々と協働した「Umaki Camp」がある。建築設計だけに留まらず、現場施工、アートプロジェクト、様々な企画にもかかわる。現在のメンバーは、家成俊勝、赤代武志、土井亘、寺田英史の4人。
http://dotarchitects.jp/


Text:Masae YAMADA

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