寄稿 寄稿

Column/ 惑生探査記

水溶性

suiyousei
水気を含んだ内側は重たく

どこからか渾々と
涌くものを湛えて

中から流されるような足どりで

ひたひた歩いて人混みのなか
帰宅

冷たい床と足の接触

凍てるカーテンはなびかない

予感のような淡さより

やかんの底で力強く沸くものが

凍えた口に注がれるのを待っている

五徳の上で狐火は青白く

促されて渾々と

浸って蘇生した末端

ふやけた矛先
低温火傷は
水膨れになり破裂

膨れた水を頭から浴びて

マスカラ爛れた黒い目で
見返す結果になったとしても

何も恨んでなどいない
覆水から彫り出した覆面の

かえらない表情で

溢れるものがただ

乾いていくのを
眺めている

嵯峨実果子
1983年京都生まれ。詩人、文筆家。 「ミことば」で平成27年度第33回 世田谷文学賞 詩部門受賞。趣味は芳香植物の栽培と観察。 mikakosaga.tumblr.com

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