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Column/ 惑生探査記

9月素描

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コーヒー豆が切れて迷ったけれど今年最後のアイスコーヒーの豆にした。アイスコーヒーの豆は普通のより煎り方が深いのだろう黒っぽい。昼間はアイスでいいけれど、9月に入るや堰を切ったように朝夕は秋が流れ込んできて、アイスコーヒー豆がなくなる前に普通の豆を買うことになる予感が既にしている。

そうめんは毎年どうしても余る運命にある。もう氷水に麺を浮かせる気にならないので、別の方法で消費しようとする。どんなに気をつけて作ってもそうめんちゃんぷるだけはうまく作れない。麺がごねごねになる。茹ですぎない、麺を冷やしてから使う、麺に油を馴染ませてから使う、などのこうすればごねごねになりませんよというあらゆる方法でやっても毎度ごねごねになる。そうなった場合はもう麺料理として食べるのは諦めて、刻んで小麦粉を混ぜてお好み焼きにように平たくして焼くとか、そうめんちゃんぷるを作ると望まない創作料理が出来上がってしまう。

涼しさを感じるとかぼちゃを煮たくなる。かぼちゃはみりんや醤油を使わず、切ってから塩と砂糖をまぶして少量の水で蒸すように煮るのがいちばんおいしい。

香川に行ってうどんを食べ、写真展に行き、見るということも見逃すということも見えないということも、写真の見せ方より写真そのものから見たいというようなことを思ってまたうどんを食べ、お土産物を眺めているとオリーブオイルやオリーブのスキンケア商品がたくさんあった。オリーブ栽培量日本一は香川らしい。オリーブの花の香水というのを見つけてめずらしいので買ってみた。花を見たことがない。画像検索すると、5〜6月に金木犀に似た小さな白い花が集まって咲くようだった。香水は実際のオリーブの花のにおいとは違っているだろうけど、すずらんに似た清潔感にジャスミンやオレンジフラワーの温かみを足したグリーンフローラルの調香になっている。

久しぶりに海を見ながら自分の育ったところが隣の国から海を隔てた島国であることに気が付いた。島国ではぐくまれたということはどこかものの考え方や受け取り方に影響しているように思う。季節を自らの情緒として内面化していることと切り離せないように。

嵯峨実果子
1983年京都生まれ。詩人、文筆家。 「ミことば」で平成27年度第33回 世田谷文学賞 詩部門受賞。趣味は芳香植物の栽培と観察。 mikakosaga.tumblr.com

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