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Column/ 惑生探査記

8月素描

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朝干した洗濯物が昼過ぎにはもう乾いている。

コンビニで売っているガリガリくんを炎天下で歩きながら食べると、後半に差し掛かったあたりで必ず端っこが溶けてきて、溶けた汁がちょうどサンダルの指のあいだに落ちて足がペトペトする確率がかなり高い。つまりコンビニで売っているガリガリくんはちょっと大きすぎる。その点スーパーで売っている箱入りのガリガリくんはとてもちょうどいい。まだ食べたいくらいでなくなるところもちょうどいい。

ポット型浄水器が示すカートリッジ交換時期を無視して使っている。1日に2.5ℓ使用で2ヶ月とあるけれど、1日に2.5ℓ使っていない自信があるので、換え時な気がしたら換えている。ためしに新しいカートリッジと交換前のと水道水の3種類を飲み比べてみた。新しいのはほとんどカルキ臭がしないし、口当たりも少しまろやかで、交換前の水は水道水の印象にやや傾き、けれど比較して飲んだときにいちばんおいしいと感じたのは水道水だった。
夏の校庭を散々走り回って、喉がカラカラになったあと、校舎の横にある水場で蛇口を上に向けてひねり、最初の方はぬるいからしばらく流して、冷たいのが出てきたら顔を近づけて吸い付くように水道水を飲んだ。乾ききった喉に勢いよく流れ込んでくる水が体の隅々まで満ちていく。その水道水には家の冷蔵庫のお茶にも自販機のアクエリアスにもない、純粋に水によって渇きをうるおす原始的な快の感覚があった。鼻から抜けるカルキのにおいはその記憶とセットになっていて、結果水道水がおいしいと感じるらしかった。

たまった楽天ポイントで敷き布団の冷感敷きパッドというのを買った。ひんやりは体を横たえた最初だけ。

盆踊り大会を覗いた。神社の中央にやぐら、いろんな色の提灯が吊り下げられ、地域の人がかき氷やわたがしの屋台を出している。年に一度くらいしかやらないのによく振付けを覚えているなというくらい新旧の盆踊り曲が次々かかる。町内の人が集まっている雰囲気で、規模はそれほど大きくない。そのなかにひときわ踊りの上手い紺色の浴衣の女性がいた。差す手引く手、足の運び、拍子の取り方、熟練度が明らかにまわりと違っていて、どの曲の振りも完璧に入っている。腰から水風船をひとつぶら下げているのも心得ている感じがする。聞くところによるとその人はいろんなところの盆踊りに参加しては踊っている人らしかった。何よりよかったのは、その人の後ろについて踊っていた小学生の女の子ふたりは彼女を真似しながら踊りのキモを見習ったようで、踊りがどんどんよくなっていたことだった。盆踊りの輪の中にあんなふうに踊りたいと思わせてくれる人がひとりでもいたならば、盆踊りという行事は変わっていただろうと、出会い損ねた私は思う。

嵯峨実果子
1983年京都生まれ。詩人、文筆家。 「ミことば」で平成27年度第33回 世田谷文学賞 詩部門受賞。趣味は芳香植物の栽培と観察。 mikakosaga.tumblr.com

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