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Column/ 惑生探査記

5月素描

sketch5

バス停のそばで土のついた朝掘り筍がカゴに盛られている。竹の旬と書いてたけのこなのだと眺めながら、去年スーパーで買ったのはぬかで下茹でをしたのにえぐかったのを思い出した。筍はとにかく鮮度が命と聞くし、朝掘りなら大丈夫かも知れないとひとカゴ買って帰る。
その辺りは昔一面竹林だったところで、40年くらい前にニュータウンとして開発されて団地がたくさん建ったらしい。バスで移動していると今も点々と残っている竹林が目に入る。あちこちに筍ののぼりが立っている。朝掘りの筍ごはんはさすがにおいしかった。

隣のベランダの鯉のぼりの尾に手が届く。大きな魚の影が泳ぐ下でメダカは日に日にふくよかになっていく。それでやっとメスが2匹、オス1匹であることがわかった。水質浄化能力のあるヒメタニシはなかなか売っていない。ネットでならすぐ見つかるけれど、ネットで生きたものをまだ買ったことがないのでなんとなく気が引ける。そうこうしていたら幼馴染みからタニシをくれると連絡がきた。

その上軒先にツバメもやってきた。土や藁がぱらぱら落ちているので巣を作っているところなのかと思っていたけれど、一向に巣作りが進まない。ただ毎晩2羽建設途中の巣を足場に寝に帰ってくる。巣は他の場所に作っているのか、それとも子育てをやめてふたりでのんびり暮らすことにしたんだろうか。

ばらも咲く。最初に咲くのは毎年同じ品種。今年は特に花つきがいいように思う。惜しみなく重ねられた花びらが重たい。一輪開いたらあとは次々開花する。雨に弱い品種は濡れる前に切って生ける。咲き尽くしたら花びらが落ちる前にたくさん集めて鍋に入れる。少な目の水を入れて沸騰したら火を弱めて3分、火を止めて5分蒸らし花びらを濾す。液体を鍋に戻して砂糖とレモン汁を加え、砂糖が溶けたら瓶に移す。出来たばらのシロップは炭酸水で割って飲む。強香種で、散布する薬は野菜にも使えるものを選ぶ。色が濃い花なら鮮やかなシロップになるのでなおいい。味わうことができるのもばらを育てる贅沢のひとつだと思う。

嵯峨実果子
1983年京都生まれ。詩人、文筆家。 「ミことば」で平成27年度第33回 世田谷文学賞 詩部門受賞。趣味は芳香植物の栽培と観察。 mikakosaga.tumblr.com

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