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Column / 惑生探査記

ばらに憑かれて3

ばらに憑かれて3
ばらも品種によって強い弱いはあるけれど、気温が上がってくると病気と虫の被害に少なからずあう。
葉や茎に白い小麦粉のような粉を吹くうどん粉病、黒い斑点が出て葉を黄変させる黒星病などは毎年必ず出る。小さい蛍みたいな格好で腹が明るいオレンジのチュウレンジハバチは茎に管を差し込んで卵を産みつける。孵化すると頭だけちょんと黒い黄緑の幼虫が群がって葉を食べる。群になっているのを見るとぞっとするけれど、見慣れて単体をよく見ると体の前の方に付いている足で葉にしがみつく姿は案外かわいい。けれど油断していると葉がなくなるので見つけたら葉ごと捨てる。
せっかく咲いた花を食い破って穴をあけ、中に入るコガネムシ。見つけたら手でつまみだし、ごめんと思いながら側溝に捨てる。踏みつぶす人もあるらしいがそれはむずかしかった。けれどつまみだして捨てるのも毎日のことになってくると、コガネムシをちょっともぞもぞする小豆くらいにしか思わなくなり、ごく機械的な動作で溝に葬るようになってしまった。慣れというのは怖い。
この前水やりをしていると大きめの蜂が飛んで来た。蜜ならどうぞと思って見ていると、花びらの隙間に潜ってすぐにコガネムシを抱えてあらわれ、じたばたするコガネムシを抱えてそのまま飛び去った。あんな硬そうなやつを食べるのだろうか。
ばらは咲いたらいつまでも咲かせておくと株が弱るので散る前に切る方がいい。四季咲きのばらは5月に咲くと11月末くらいまで返り咲き続ける。花数こそ減るけれど、真夏にも花を見せてくれる。咲いて3、4日ほどはそのまま咲かせておくけれど、まだ咲いている花を切ろうとする私を見て隣のおばあちゃんは「まだきれいに咲いてますのに」とコメントする。言いたいことはわかる。数株あるばらが咲き始めるとわりと賑やかになるうちの軒先を楽しみにしてくれている町内の人もいて、そんな話しを聞いてしまうと、無碍に切れなくなってきて、なんとなく鑑賞期間を取ってもういいだろうというあたりで、隣のおばあちゃんに出くわさない隙にさっと切って家のなかで咲かせている。

嵯峨実果子
1983年京都生まれ。詩人、文筆家。 「ミことば」で平成27年度第33回 世田谷文学賞 詩部門受賞。趣味は芳香植物の栽培と観察。 mikakosaga.tumblr.com

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