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Column/ 惑生探査記

メダカの空腹

medaka

先週のコラムで書いたうちに来た4匹のメダカは、1匹睡蓮鉢から飛び出して干からび、3匹になったあとはおだやかに暮らしている。
睡蓮鉢にわいていたわりとおぞましいボウフラの群を早々に食べ尽くし、今度は他に食料があるのかどうか逆に心配になってきた。肉眼では食べられそうな生物は確認できない。そのまま数日が経った。活発に動く昼間に何か食べているか観察してみると、水面に浮かぶ埃などを口に入れてはピッと吐くを繰り返したり、特に藻など生えてもいない鉢の側面をしきりに突ついたりしている。まだメダカの生態をよく知らないけれど、その様子はお腹を空かせているようにしか見えない。
ボウフラがたくさんいるからエサはいらないと思って専用のエサを買っていなかった。メダカ、空腹、見分け方、で検索すると、痩せてきたらエサ不足とあった。痩せる手前で判別のつく方法はないのか。それにそもそも細いメダカの痩せ具合を見極められる自信がない。
メダカの空腹が気になって仕方なく、夜にAmazonでメダカの餌を注文したら翌朝ポストに届いた。メダカの餌は顆粒の和風だしのような細かい粒で、水面にまいたら3匹はすぐに気付いて浮上し、なかなかの勢いで食べ始めた。やはり空腹だったのだ。食べ残すほどあげてしまうと水質汚染になるそうで、1食耳かき1杯分。ある朝手元が狂って小さじ2くらいの量をまいてしまった。急いで台所に行き余分なエサをすくいとれそうな道具を探す。メダカをすこやかに育てる鍵は水質の維持だとメダカサイトに書いてあった。まずい。油かすを漉す取っ手のついた網は目が細かくてちょうどよさそうだった。できるだけ丁寧にエサをすくいとったけれど、それでもかなりの量が底に沈んでしまった。そんなことをしながら睡蓮鉢のそばにいると、水を飲みにやってくるハチに毎日出くわす。ハチは私に慣れたようすで水を飲んでいて、私もハチに慣れてもうお互い逃げない。
メダカは飼ってきたときより体つきもしっかりとし、3匹のうち1匹はお腹がふくらんできたように見える。卵を産んだら隔離して育てないと親は稚魚を食べてしまうらしい。
空腹の心配はなくなったけれど、人工餌のせいか透明だった水が濁りはじめた。今度は水質のことが気にかかる。メダカサイトによればタニシは水質浄化能力が高いらしい。濁った水槽に2、3匹入れると3日で水が澄むという。それで今いちばんタニシがほしい。

嵯峨実果子
1983年京都生まれ。詩人、文筆家。 「ミことば」で平成27年度第33回 世田谷文学賞 詩部門受賞。趣味は芳香植物の栽培と観察。 mikakosaga.tumblr.com

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